裁判において、立証する事柄は証拠に支えられなければなりません。セキュリティ専門家として法廷に立つことはまれだと思いますが、データの保管をするうえで法廷で通用する証拠を保全するのはセキュリティ専門家の仕事の一部になりえます。とはいっても、ディスクや報告書、人の発言やコンピューター内のデータなど、証拠にはいくつも形態があります。まずは証拠の種類から整理していきましょう。物的証拠とは、ナイフやDVDや契約書など物体として存在する証拠です。ここで気を付ける点は純粋なデータは電子であるため物体ではなく物的証拠には含まれないケースがあります。直接証拠とは実際に見た人の証言、本人の自白など事件の事実を示す直接的に説明可能な証拠です。情況証拠とは指紋やアリバイなど事件の事実を推測できる証拠です。補強証拠とは他の証拠の事実を証明するための別の証拠です。自白した事実と現場の状況が違う場合があります。その際にはそこに犯人がいたという補強する証拠が必要になってくるわけです。伝聞証拠とは体験談など体感したことを供述することです。法廷の外でなされた話の内容を証拠にして、ある事実を証明しようとするものです。二次的証拠とは契約書のコピーなどオリジナルから複製されたものです。これらの証拠を法廷で提示し、裁判官が判決を下します。
特に、検察官が証拠を集める場合に気を付けなければならないことがあります。合衆国修正第4条(Amendment 4)によって、令状なく捜査・押収することは許されず、令状は宣誓・確約を基に相当な理由をもって発行され、捜査・押収対象も特定していなければなりません。つまり、捜査はプライバシーを侵害する可能性があるため、「この人は犯人っぽいなぁ」という曖昧な理由での捜査はできないということです。
歴史から見る合衆国修正第4条(Amendment 4)
これに加えて、犯意誘発型のおとり捜査も禁止されています。これは、本人に、違反性のある行動の意図がないにもかかわらず犯罪をさせる行為です。当然、違法、非倫理的行為として見なされます。その一方で、既に違反性のある行動の意図があり、決定的な証拠を得るために状況を作る行為は、合法、倫理的とされています。
正しい手順で集められた証拠は、適切に保管する必要があります。証拠が収集されてから裁判までには時間がありますから、それまで証拠能力を持ち続けなければなりません。証拠保全とは、証拠能力を保つための活動のことです。例えば証拠を手に入れた時点から、いつ・どこで・誰が・何をしたものなのかの順番に書き残しておくことがその一つです。
ただ、これだけ頑張って集めた証拠がすべて有効になるわけではありません。証拠となりえるのか、食い違った証拠が出た際にどちらが優先されるか、いくつか原則があります。最良証拠の原則とは、模造の証拠よりもオリジナルを優先するという原則です。契約書の原本とコピーの内容が食い違っている際には、原本の内容が優先されます。伝聞証拠禁止の原則とは、伝聞は証拠とはならないという原則です。そもそも、人間の脳は事件から経過すると勘違いや記憶のすり替えが起こりますので、人が体感したことをそのまま証拠として鵜呑みにはできないのです。口頭証拠排除の原則とは、書面にて合意した内容が口頭で合意した内容と異なるとき、口頭による合意に拘束力があるとは限らないという原則です。物体として残っているものが強い証拠能力を持ちます。まとめると、証拠は不当な方法で収集してはいけないこと、証拠能力は維持する必要があること、証拠には優先度があることを覚えておきましょう。
原則として伝聞が証拠として認められない。ただし、伝聞例外に当たるケースもある。
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